スイーツ・ラヴ
いつも緊迫した雰囲気に包まれているハンターベースだが
その日は違っていた
甘い香りが漂い
司令室にも誰もいない
一同は1F下の生活スペースへと移動していた
この平和な1日はシナモンの一言から始まった
「だれかケーキの作り方知りませんか?
一度作ってみたいんですけどよくわからなくて・・・・」
たまたま今日は息抜きをと取った一日の休み
部屋の中でおのおの好きなことをしていた4人は目を丸くした
イレギュラーハンター・・・
賞金稼ぎ・・・
鋼鉄の戦士・・・
盗賊・・・
そんな業種の人物達に訊くこととは到底思えない内容だった
「ケーキの作り方って言われてもな・・・」
マッシモが困ったように頬を掻く
「そんなのはレディに聞くもんだ」
スパイダーは眼でマリノを指した
「あたしはケーキなんて作らないよ!」
マリノはムキになってスパイダーに言う
「ケーキかぁ・・・あ、適任者がいるよ!!」
アクセルはシナモンの手を引くとスカイルームへの転送装置を起動させた
「エックス〜シナモンがね、ケーキの作り方教えて欲しいんだって!!」
部屋の中に少年の影を認めるなりアクセルがそうはしゃぐ
「ケーキ?」
エックスがきょとんとした顔で聞くとシナモンが頷いた
「はい!お願いできますか?」
シナモンが元気よくお願いするとエックスは微笑んで
「いいよ・・・」
と答えた
「エックスってケーキとか作れるのかい?」
マリノが不思議そうにアクセルに訊いた
「作れるよ、いっつも隊員達にクッキーとか差し入れしてるもん」
「・・・」
マリノは英雄の意外な姿に言葉を失う
「器用なんだな・・・」
ぼんやりと呟いたのはマッシモ
「あれ?スパイダーさんは?」
ナナがいつも見かける漆黒の影を探して立ち上がる
「スパイダーならスカイルームで一眠りするって」
アクセルが天井を見上げながらそう言った
俺は暗黒の中にいた
目の前には鏡
映るのは・・・
《私》・・・
「お前は私の分身にしか過ぎない・・・」
鏡が嗤う
「俺は俺だ!!」
鏡にカードを突き立てる
円状にヒビが入り・・・
鏡が囁いた
俺の唇が俺の意識に反して奴とともに動く
『私は・・・神になるのだ・・・』
「っ・・・」
俺は砕けた鏡に映る自分を見る
鏡の中にいたのは俺・・・
そして闇の中にいたのは・・・
リディプス《私》・・・
「・・・パイダー、スパイダー起きて!」
俺は目を開ける
覗き込んでいたのは・・・
「エッ・・・クス・・・?」
俺はゆっくりとそいつの名前を呼んだ
「ケーキができたから起こそうと思って・・・どうしたの?うなされてたよ?」
碧玉が心配そうに俺の顔を映す
いずれは敵となる・・・愛しい少年・・・
「なんでもない・・・ちょっと悪い夢を見てただけだ・・・」
俺がそう言うとエックスはベッドの横に置いてあるサイドテーブルを指差し
「食べられる?」
微笑みと共に優しい声がかけられた
戦場とは違う少年らしい笑み・・・
俺は帽子のつばを持ち上げるとエックスの細い腕を引いた
倒れこむ少年の体・・・
胸元に埋まる蒼い髪・・・
「ケーキより先にお前が食べたい」
そう耳元で囁くと見る見るうちに顔が真っ赤になってゆく
小さな体からもトクトクと動力炉が高鳴る音が聞こえる
「な、何言ってるんだよ!」
上目で俺を睨むエメラルド・・・
その行為がさらに愛らしさを増させていることに気がついてるのか?
男を狂わせてしまいそうなほどに・・・
俺は笑う
俺はこいつに酔っている・・・と
俺はふとエックスの髪から香る匂いに気付く
そこから香るのは甘い甘いバニラエッセンスの香り
その香りに俺が微笑むとエックスが不思議そうに顔を覗く
「おまえ・・・さ・・・」
「何・・・?」
見つめると碧の瞳が大きく揺れた
「お菓子みたいだな」
「なんだよそれ!」
ぷぅっと頬を膨らませて抗議してきた
俺はその頬にすっと唇を重ねる
俺はお前に愛を誓おう・・・
いずれお前が俺を憎む
その日まで・・・
あとがき
リクエストを下さった零厘様にささげます
って・・・ごめんなさい甘々じゃないですm(_ _)m
なんだか微妙な代物になってしまいました
毎度駄文でほんとにすいません(T0T)
黎幻 魔海