ただ・・・一緒にいる平穏を・・・


それを臨んだ俺は今・・・


ただ1人で荒野に立っていた




愛臨む者に捧ぐ、蒼き天使の鎮魂歌





荒廃した大地に座り込む

涙が白金色の砂を暗い黄金の塊に変える

薄闇の空に星だけが瞬く


見慣れた・・・景色



ただ泣きたい

空に向かって大声で


そして少しだけ・・・


カミサマを恨んでもいいだろうか




「エックス・・・」


一緒に『彼』を探していたシグナスがエックスに声をかけた

アーマーを纏っていないその華奢な体は孤独に押しつぶされそうで

なにより・・・こんな小さな英雄がこの世界を救ったとは信じがたかった

そして彼を置き去りにして消えた彼の『部下』に「さっさと帰って来い」と言ってやりたかった


「・・・エックス、私は引き上げる」

「・・・わかった・・・俺はもう少し・・・探してみるよ」

精一杯の微笑みをこちらに向けて来る<蒼き英雄>
その笑顔が・・・ただ『彼』の<喪失>を伝えるようで痛々しい

シグナスは転送装置を起動させる





そしてただ・・・



暁の空の下



蒼い天使が取り残された











「ねえ・・・ひどいよ・・・」

天使はただ空の玉座に住まう神に呼びかけてみる

「返して・・・」

手から滑り落ちる砂の髪
夜を秘めた空の瞳
砂漠の風に似た冷たさと熱さ・・・そして嵐になりうる激しさを秘めた

「ゼロを返して・・・」

神が生み出した人
人が生み出したヒト

「返して・・・帰してっ!!」

傷付いて痛みを引きずって守った世界
その世界で愛しい人との再会を求めていた
それが最高の報酬だった
褒賞に与えられた長い休暇を2人で普通に過ごす
それが至福の時間だった

なのにいまエックスの隣りは誰もいない空白のスペースがあるだけだ

「帰して・・・」

地球を救ったから彼がいなくなったというのだろうか

嫌だった

嫌な予感がしていた

ゼロを乗らせたくなかった

あのシャトルだけには



《ゼロ・ウイルス》が発生し
その邪悪な霧に抱かれるとどこかで安らいでしまう自分がいた
彼と似通ったデータを持つそのウイルスに嫌な予感は高まった

そして予感は現実に変わった

目覚めの孤独がただエックスをゆっくり蝕んだ

時折彼の気配が強く香るウイルスに
ゼロと同じ匂いを纏った《悪》に
何もかも差し出してかまわないから一緒にいてほしいと

そんな不謹慎な願いを抱く自分がいる


「ゼロ・・・お願い・・・」


自分が幻想にすがってイレギュラーになれば
本当の彼があの《約束》を果たしに来てくれるだろうか

そんな邪悪な望みさえエックスの心は簡単に抱いてしまう


「お願い・・・俺が・・・何もかも捨てないうちに・・・」





帰ってきて・・・




その願いはただ・・・風に運ばれる















WEB拍手お礼小説でした





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