闇が明ける時
お前を抱き締めるたびに思う
俺はお前のそばにいてはいけないんだ
俺はお前を壊してしまう
だから逃げろ
だから離れろ
そんな無防備な笑顔で微笑まないでくれ
いつか壊れるのがわかっている
いつか壊してしまうのを知っている
だからもうこれ以上近づくな
だからもう微笑むな
だからもう・・・
だからもう・・・
俺にその手を差し伸べるな
壊してしまいたくなる・・・
君がオレから逃げるようになった
壊してもいいから一緒にいて欲しい
そんな情熱(オモイ)を抱いてても
やっぱりオレは・・・
君の重荷でしかないのかな
君はいつか話してくれた
悪魔は天使の白い翼を奪って檻に閉じ込めてしまう
だからオレとは一緒にいられない
でも・・・
そんなのかまわない
だから・・・
だから
オレのそばにいて・・・
俺は壊れても君を思いたい・・・
抱きついてきたお前を引き離すのが
俺にとって精一杯だった
この細い肩を掻き抱いて
淡い唇を奪えたらどんなにいいだろう
衝動に任せてお前を抱けたらどんなに・・・
だがそれは許されない
俺が自分を許せなくなる
君にそっと躰を引き剥がされた時
とても悲しかった
俺を愛してるって言っていた同じ声で
同じ顔で
同じ瞳で
「別れよう」
なんて
「終りにしよう」
なんて言わないで・・・
お願いだから・・・
お願いだから・・・
神様・・・どうか
血に濡れた手で祈るオレの願いを聞いてくれるなら
彼が・・・
ゼロがオレのことを・・・また好きになってくれますように
「別れたい」
「終わらせよう」
それしか言うことはできなかった
「どうして」と言う叫びと
涙で・・・また・・・あいつの顔を歪めた
「愛してる」と囁いて
その顔をほころばせてやりたかった
それを許さなかったのは
運命という名の・・・変えられない未来・・・
今より深く傷付くお前を見たくない
だから・・・だから・・・終りだ
オレは何もない空間に踏み出した
任務の最中
高いビルの屋上
何も思わなかった
恐怖も
後悔も
オレにはなかった
何もない心が
傷付いていたんだ心が
もう終りにしたいと悲鳴をあげていた
これで地上に叩きつけられたら死ねる
終りにできる・・・
そう思いながら・・・俺は迫り来る地面を前に目を閉じた
「うあああああ!!」
隊員の1人のそんな叫びを聞いて俺は顔を上げた
声は屋上から響いていた
雲よりなお上にある・・・屋上から
それと同時に何か輝きを持ったものが落ちてきた
それは・・・
それは・・・
「エックスッ!!」
翼を失った天使が堕ちてくるようだった
あいつは悲しい微笑みを浮かべると・・・
蒼いアーマーを解除し、真っ白な衣を纏うと
ゆっくりと目を閉じていった
目が覚めたら・・・
全て夢だったらいいのにと思っていた
目が覚めたら、ゼロがオレにいつもの笑みを浮かべて
「愛してる」って言ってくれて
2人で築く未来の話をする
そんな日常が戻って来て欲しい
それが戻らないなら・・・
戻らないなら・・・
神様・・・
地獄でも天国でもいいから・・・
オレが彼を見ないで済む場所に連れて行ってください
オレは、迷わずに大地を蹴ってあいつを抱きとめていた
冷たい躰
青ざめた顔
泣き腫らした目
死を覚悟した天使
まるで失恋した少女そのもののようなあいつの顔
「・・・エックス・・・」
オレには名を呼ぶことしか出来なかった
目を開けると、真っ暗な空間に横たわっていた
「目が覚めたか?」
暗闇の中で淡い光を纏って輝いた存在を見つける
「ゼロ?」
「・・・なぜあんなことをした・・・」
「・・・」
オレはシーツを握りしめる
「そんなの・・・オレの勝手だろ・・・」
君のせいだって言いたかった
けど・・・
けど・・・
言ったらまた・・・
重荷になるよね・・・?
「出て行ってよ・・・」
オレはゼロを突き飛ばした
「ゼロなんて・・・大嫌い・・・だいきら・・・」
2度目にそう言おうとしたとき・・・
オレの唇は・・・君に奪われていた
耐えられなかった
未来を裏切った瞬間だった
ただその唇が欲しかった
今の思いを偽りたくなかった
「エックス・・・」
あいつの細い肩をぎゅっと抱き締める
ひどいよ
ずるいよ
どうして・・・
そんな熱っぽい声で名前なんて呼ぶの・・・?
「ゼロッ・・・」
俺もぎゅっと腕に力を込めた
手を離したらもう・・・オレのゼロじゃなくなる気がして
離せなかった
2つの影はしばらく動かなかった
運命付けられた未来を持つ
目的のために作られた天使と悪魔
憎み合うことはあっても・・・
愛し合うことはないはずの2人
離れればそのまま運命に引きずられるようで
2人とも、そのまま離れることが出来ずにいた
「ねぇ・・・ゼロ・・・」
エックスが沈黙を破った
「前に言ったよね?天使と悪魔は愛し合えないって・・・
悪魔はどんなに愛しても天使を壊しちゃうから・・・
絶対に結ばれることはないって」
「・・・ああ・・・」
ゼロが頷く
「・・・もしその天使がオレなら・・・」
エックスはゼロに微笑んだ
「好きな人に・・・殺されても・・・壊されても・・・いいと思う・・・」
エックスの白い手がゼロの頬を包んだ
「好きな人が殺してくれるなら・・・俺はうれしいと思う」
「エックス・・・」
ゼロの瞳に光が差した
途端、エックスの淡い紅の唇を奪うと
そのまま貪るようなキスをする
「なぁ・・・エックス・・・」
「な・・・に・・・?」
キスの熱さに浮かされたようにとろんとした瞳のままエックスが問う
「俺がお前を壊そうとしたら・・・止めてくれるか?俺を・・・」
ゼロはそう言いながら、エックスをベッドに押し倒す
「うん・・・」
服を肌蹴はじめた彼の手に躰を委ねながらエックスは返事をした
「それに・・・」
聞き取れぬほど小さな声でそう呟くと光り輝く微笑みを浮かべる
いいよ・・・
君になら・・・壊されても
そう・・・心の中で付け足しながら・・・
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