独り立つ華の夜に・・・







『エックス・・・』

俺を呼ぶ低い声・・・

俺を呼ぶ紫闇の影・・・

『どこかに行くときには俺も連れていきな・・・』

俺に微笑む顔・・・

俺を見つめる紅の瞳・・・

『ご自慢の扉らしいがレプリロイド2人分の爆発なら隙間ぐらいは開くんじゃないか?』

俺の見た最後の背中

俺に渡された一枚の札






ハートのエース・・・






「スパイダー・・・」

泣いて夜目が覚める・・・

最近日課になりつつある・・・

俺を助けてくれた・・・

ゼロがいなくてもろくなりかけた心を救ってくれた彼

そして・・・


『私は神になるのだ!!』


そう裏切った彼・・・


打ち明けたかった胸の内・・・


打ち明けれず燻った想い



思考回路が焼ききれそうになるくらいイタイ・・・



この想い・・・




俺は部屋を出て、寝巻きのままセントラルタワーに向かう

辛うじて崩壊を免れた居住区に

星空を走るエアバス

深夜だというのに特別に動かしてくれた



俺は、タワーに着くと彼に教えてもらった抜け道を過ぎる

誰もいない秘密の抜け道・・・

角をいくつも曲がり

1F・2Fと階を駆け上がり・・・


ついたのは1つの扉・・・






初めて会った時彼が立っていたあの場所





扉を開けるとそこには小さな足場・・・



2m四方ほどしかない足場



彼が教えてくれた秘密の場所



ゼロがいないと泣いていた俺に教えてくれた






初めて彼と笑った場所





そこから見えるのは



満天の星・・・


漆黒の空を彩る華・・・



俺は足場から足を中に投げ出し腰掛ける





彼をこの手で殺してから

ここに来たことは無い




来てはいけないような気がした


彼の命を奪ったのは紛れもなく俺なのだから・・・


「スパイダー・・・」

気が付けば目が彼の姿を探している

気が付けば耳が彼の声を探している

気が付けば口が彼の名を呼んでいる

気が付けば手が彼を抱きしめようとのびている

気が付けば心が彼を求めている



彼に帰ってきて欲しいと・・・


そう望んでいる自分がいる・・・・



「スパイダーァ・・・スパイダァアアア!!!」



気が付けばいつも・・・涙が頬を濡らしていた



空に呼ぶ


彼の名前


宇宙で散った


俺の大好きな華・・・



せめて彼に届けたかった

この想いだけでも




「そんなに大声で呼ばれちゃ、静かに眠れないだろう?」



俺は耳を疑った・・・

振り向けば背後に立つ長身の影・・・


「お前は泣いてばかりだな・・・エックス・・・」

「スパイダー・・・?」


帽子のつばを持ち上げながらクールに笑う彼・・・


「今度は俺のために泣いてくれてたのか?」

彼の手が俺の頬を拭った

「スパイダー・・・?」

「俺以外の誰かに見えるのかい?」



俺は思うより先に彼に抱きついていた



「スパイダー・・・スパイダー・・・」

「帰ったぜ、エックス」

背中をきつく抱きしめてくれる腕・・・

戻ってきた温もり・・・


彼の肩に顔を埋め俺はただ泣くことしかできなかった






「エックス・・・」


しばらくの沈黙の後・・・低い声が耳元で囁く


「もう・・・どこにもいかないで・・・」

小さく呟いたのは俺の祈り・・・

俺の願い・・・


「いいぜ・・・」


彼の顔が眼前にあった



「俺の命のコイン・・・全部お前に賭けてやる・・・」



次に感じたのは・・・


唇の熱・・・



吐息が溶け合い



お互いを求め合う




ただ熱い甘い口付け・・・




『エックス・・・愛してる・・・』



口付けの狭間に呟かれた言の葉






俺が望んだ・・・言葉・・・













「エックス!エックス!!」


俺が目を開けるとそこにあったのは友人の顔・・・



「ゼ・・・ロ・・・?」



気がつけば元のベッドの上に横たわっていた



「お前が出発の時間になってもヘリポートに来ないから心配になったんだ」



「そっか・・・今日・・・帰るんだったよね・・・」



俺は起き上がるとゼロに微笑む




「すぐ用意するから、外で待ってて!」


「ああ・・・わかった・・・」



長身の背が扉に向かう



と・・・



「エックス・・・」


「何?」


振り返ったゼロになおも微笑む


「無理はするな・・・」


ゼロはそう一言言い置いて・・・


ドアの向こうへ消えた







そっか・・・夢だったんだ・・・




そう思い何気なく寝巻きを脱ぐ

姿見に映る自分の姿

その左の胸元


紅く咲いた華・・・





俺は慌ててサイドテーブルの上に置いたトランプを手に取る



それはハートのエース・・・


だけのはずだった・・・



しかし


それを持ち上げた途端


もう一枚のトランプが落ちた


それは・・・



ハートのJ・・・



ナイトのカード・・・






涙が零れる



嬉しくて



愛しくて






たとえそばにいなくても



君は愛しい



俺の守護者<ナイト>




あとがき

リクエストを下さったルア様にささげます
純愛(?)スパックスです
気に入らなかったらごめんなさい〜
駄文で申し訳ありませんm(_ _)m


黎幻 魔海







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