愛願いし故の終焉






零空間・・・

悪意に満ちたその空間

紫闇の中にたたずむ赤と蒼



「お前は帰れ!」

「いやだっ!ゼロ、君を失いたくない!!」


紅の破壊神は刃を剥き出しにしたまま視線をそらす
蒼の救世主は涙を浮かべたまま兵器と化した右手を元の姿へと戻す


「俺はウィルスに感染しない」

「わかってるっ!!だからこそ君にイレギュラー判定を下されたくない・・だから検査を受けて・・・」


闇の中に響き逢う声は・・・


互いへの重いに満ち溢れたものだった・・・










エックス・・・帰ってくれ

俺の秘密がこの奥にある気がするんだ

いや・・・きっとあるはずだ・・・

この感覚・・・

重い鎖から解き放たれるような感覚・・・

きっとここに【何か】がある


お前に知られてはいけない【何か】がここに・・・・




行っちゃだめだ・・・

行かないで・・・ゼロ

きっとこの先に何かがある

わかってる

この嫌な感じ・・・

背筋が凍るように冷たくて

胸が締め付けられて、ざわめく・・・この感覚


【悪】だよ・・・確かな悪意がここにある

穢れた・・・忘れ去られた

シグマよりもっと昔の・・・

古の【悪意】




ゼロはまだ続く闇の先に視線を移した

そしてその先に向かおうとする

「・・・ゼロ・・・」

エックスが右手をバスターに変化させ、構えなおす

「行くなら・・・俺を倒していって・・・」

「エ・・・ックス・・・?」

瑠璃色の瞳が見開かれた
その前にいるのは確かな意志を貫こうとする愛しき天使の姿

「わからない・・・どうしたら良いのか自分でも・・・」

涙に濡れた目をそっと閉じた

「君が教えてくれたよね
見るんじゃなくて・・・
聞くんじゃなくて・・・
触れるんじゃなくて・・・
【感じる】って・・・・」

エックスの瞳が開かれる
そこに涙も迷いもなかった

「ゼロ、だめだよ、この先からは“悪”を【感じる】
君を行かせたらきっと良くないことが起こる」

「エックス・・・俺は・・・大丈夫だ」

ゼロはいつものように安心させようと微笑を浮かべた
だが、エックスは武装を解こうとはしない

「ゼロ・・・君にいなくなって欲しくないんだ・・・
本当に心配してるから・・・
本当に信用してるから・・・
戦ってでも・・・君を連れて帰る!!」

ゼロは彼の意志の強さを察すると・・・


セイバーを構えた




イライラする・・・

手を伸ばせば届く位置にある

【ソレ】を手にすれば俺はもっと自由になれる

邪魔をするな

そこを・・・どけっ!





攻撃をかわすたびにわかる

確かな狂気と静かな狂喜が高まって・・・

俺の知ってる君が消えていく

本当の君が・・・

ううん・・・違う・・・

ソレが本当のキミ・・・?




光弾が風を切り
刃が土を舞い上げる

赤と蒼・・・2つの乱舞


そこに重なるのは知る者のなくなった




宿命






一瞬、蒼がバランスを崩した

そこに叩き込まれたのは鋭い剣戟




刃が白い肌を切り裂き







ステージに紅を添える













気がつけば・・・俺は床に倒れていた

切り刻まれた体が痛い

その躰にのしかかってくる

いつもなら幸せを感じるはずの君の重さが

今はぞっとするくらいおぞましい

伝わるのはぬくもりじゃなくて・・・





悲しいくらい冷たい殺気





エックスの首にセイバーを突きつけて

高揚感がさらに増すのを感じていた


「エックス・・・」

帰れ


そう言うつもりだった

そう言うつもりだったはずだ・・・



だが俺は・・・


自分でも嫌になるような笑みを浮かべていた






エックスが嘲るような笑みを浮かべたゼロの頬に触れる

優しい指先が自分の生死を握る青年を愛しげに撫でた


「・・・ゼロ・・・」

青年の切っ先が堕ちる



少年が甘く蕩けそうな微笑みを浮かべ・・・




その淡い紅の唇が声なき言の葉を紡いだ







あ・い・し・て・る









それに続いたのは・・・確かな爆音










「っぅ・・・」

俺は大きく吹き飛ばされて頭を振る

腹部に走る焼けつく痛み

同時に戻ってくるのはいつもの感覚






俺は今・・・何をしようとした・・・?








ゼロをバスターで吹き飛ばして

俺は体を起こした


だめだ・・・


まだやられるわけにはいかない




ゼロを行かせるわけには・・・





そう思って立ち上がった




君を見据えると・・・



そこにいたのは・・・呆けたようないつもの君






エックスがゼロに駆け寄った

ボロボロの躰で

縋るように

ゼロの目に戻った正気の輝きを察して・・・







その背後に迫る・・・黒い影に気がつかずに









エックスが抱きついてくる

「・・・悪い・・・エックス・・・俺としたことが」


全く情けない、何故あの先の物にこだわっていたんだ?

・・・ここは一旦2人でベースに戻るのが先決だ

「ゼロ、いいから喋らないで・・・俺の方こそごめん」

エックスの声が全てを洗い流すように

俺の中から先ほどの悪意が消える




そして・・・感じる



あの



確かな殺意




アイツの・・・気配




俺はただ嬉しくて・・・

ゼロに抱きついた

「すまない・・・」

何度も囁いてくれるその声はいつもとおなじ

伝わってくる温もりも優しくて・・・


良かった・・・

いつものゼロだ・・・




「・・・エックス・・・」

ゼロがそっと手中の天使の名を呼んだ

「ゼロ、その怪我じゃ・・・もう先には進めない
俺と一緒に一旦ベースに帰ってこれからのことを・・・」

エックスがそういって微笑んだ




刹那に空間を凍結したのは








穢れた悪意











「エックス!!!」

俺はエックスを突き飛ばした

反動で立ち上がってセイバーを構える


いつもなら造作のない・・・



だが・・・



「っ・・・」



腹部からの出血が動きを鈍らせる



かわすひまなどなく





俺は悪意に満ちた確かな痛みを味わった











何が起こったかなんてわからなかった


ゼロにつき飛ばされて・・・


目の前が赤く染まった




何が起きたかわからない


ただ




「ゼロッ!!!」





愛しい君の名前を叫ぶのが精一杯だった







ゼロの体が紅の中へと倒れこんだ

だが彼はすぐに体を起こし、闇を見据える


つっと整った顔を紅い筋がよぎった

「やはり貴様か・・・シグマ・・・」


言葉と共に口から伝う鮮血

だがその顔には不敵なまでの笑みが浮かんでいた




「さすがは、ゼロ・・・と言ったところか」





闇を揺るがす声が・・・紫闇の空間に響き渡った









「っ・・・ゼロッ」

俺はゼロに駆け寄る

ゼロはシグマを見据えたまま

けど・・・今のままじゃ勝ち目はない


逃げなきゃ・・・


一旦ハンターベースへ





エックスが俺に駆け寄ってくる

・・・よせっ・・・

シグマが標的を移した

間に合うかっ!?



いや・・・・











間に合えっ!!











ゼロがエックスを抱きかかえて跳んだ

蒼き救世主の手を紅が染める

「ゼロッ!」

「エックス・・・引くぞ」

黒い影に背を向けて2人は走り出した
お互いでお互いを支え合いながら・・・








エイリアから事前に聞いていた

転送ゲートは目前だ

・・・この先に進む必要なんてない

分が悪すぎる・・・

とにかく・・・エックスだけでも・・・






ゼロ、ごめんね

俺が打った傷の上からさらに傷・・・

君の配線とオイルの隙間から向こうが見える

どうしよう

怖い・・・




死なないで



ゼロが転送システムを起動させる

背後から迫る影は近い

「ゼロ、ここは俺が押えるから、君は先に・・・」

エックスがそう言ってゲートを開く


その瞬間ゼロが浮かべたのは・・・











不敵な笑み











「エックス、お前が先だ」

俺はアイツを無理矢理ゲートの中に押し込み

パネルを押す




「ゼロッ!!」


イヤダイヤダ嫌だっ!!

君の癖

悪い癖


俺のことを庇わないで


俺は・・・俺は女の子でも

君がかつて失った彼女とも違う





だから・・・







俺の事を護らないで・・・








エックスの視界の中に白が広がった

ゼロがその光に向かって剣を構える








そして





静寂が・・・場を満たした









「ゼロォッ!!!」


そう叫んで手を伸ばせば・・・

そこはゼロと共に戦場へと出たハンターベースの転送ゲート


心配そうに俺を見つめたのは



君じゃなくてオペレーターのエイリア








俺の胸を・・・ただ不安と失望がみたしていく














また・・・俺のせいで・・・





エックスはすぐにメディカルルームへと運ばれた

ボロボロのアーマー・・・

ボロボロのボディ・・・

ボロボロの『心』・・・




そしてボロボロと零れた




大粒の涙








今なら言える




あの【何か】が何だったのかを・・・



そして俺が何なのかを



俺は・・・俺は・・・






















闇だ







だから・・・






エックス・・・













い・・・・











さよならだ・・・

















行かなきゃ・・・


行かなきゃ・・・



ゼロはきっと待ってる・・・


まってるんだ・・・








それから1週間後


危篤とも言える状態からエックスは甦った



だが・・・


紅蓮の剣士はいまだ戻らず・・・






ただ、消えうせた悪意の反応から





彼がそれを消したのは間違いない






俺は荒廃とした砂漠を歩いた


君が何処にいるのか・・・


君に何があったのか・・・


それさえわからずに


ただ君の髪の色に似た砂を踏みしめ

ただ君の瞳の色に似た空を仰いで



ただ君を必死に探してる








どこかで血塗れで苦しんでいるんじゃないかと

どこかで俺を呼んでくれているんじゃないかと







ただ君を探してる・・・






エックスの足元で小さく硬い音がした







俺は土を掘り返した


この数日の間に何度も繰り返した行為



何か残っていないか・・・



するりとすり抜けていく砂を掘り進めて


あの空間の骸が残るこの場所に



君がいることを信じて・・・・







エックスの細い指先に確かな冷たい金属の感触


同時に見覚えのある紅が顔を出す




掘り進めて行けば・・・そこにあったのは






彼の魂とも言うべき剣・・・



俺はセイバーを抱き締めた

柄は真っ赤に汚れ

金色の砂をどす黒く染めて纏わりつかせて



信じたくない結末を俺に突きつける







ねえ・・・







ゼロ・・・























君はどこにいるの?





















君のいる場所は寒い・・・?
君のいる場所は暗い・・・?
君のいる場所は静か・・・?























ねえ・・・














答えて・・・?

















































俺のこと・・・もい・・・?





















エックスはセイバーを構えた



そして光の刃を露わにさせる











強く・・・なろう

強くならなきゃだめだ


君が俺の事を護らなくていいように


俺のせいで君が消えてしまうことのないように









もっともっと強くなろう












そうすれば・・・君は・・・
笑って帰ってきてくれる気がするから


































そして・・・10年の月日が流れた




















「エックス、本当に始動させるの?『エルピス』計画」


エイリアが山積みの書類と資料の中から顔を出す

そこには蒼いローブ姿のエックス

「うん、マザーエルフ・プログラムも上手く行ったし・・・
エルピス計画も上手くいけば・・・新しい楽園、ネオ・アルカディアもいい街になると思うんだ」

彼は微笑みながら書類に目を通し、サインしていく

「そう・・・」

エイリアは穏やかに微笑んで蒼穹の救世主を見つめた

「今度新しい科学者、Dr.バイルも計画に参加してくれるんだ・・・
おかげで計画がはかどりそうだよ」

「エックス、無理は禁物よ、貴方はネオ・アルカディア計画の重要責任者であるとともに
現役のS級イレギュラーハンターなんだから」

「わかってる・・・」

エックスが微笑を浮かべたそのとき

『エリア2K−5にてイレギュラー発生、第17部隊急行せよ!』

けたたましくサイレンが鳴り響く

「エイリア、オペレーションを頼むよ」

「OK、指示された場所にスタンバイできたら通信をいれて」

彼女は頷き、オペレータールームへと引き返していく
その背中を見送りながらエックスは腕につけられた機械にコードを入力した
蒼いローブが素早く組変わり真っ青なアーマーへと変化する
その顔はすでに穏やかなものではなく戦場をかける戦士のもの

そして・・・

「さあ、ゼロ、行こうか」

そう呼びかけて彼は迷わず卓上の『彼』を手にとった

『彼』の形見だと皆が言うあのセイバーを・・・

「・・・違うよね」

蒼き天使が手中の剣に微笑みかけた
これは『彼』だと、エックスは信じている
この剣越しに『彼』はエックスを見ているのだと・・・

「君が僕を護らなくて良くなったら・・・
そんな世界を作り上げたら・・・」








「君は帰ってきてくれる」


それがたとえ僕の幻想の約束であっても





エックスは駆け出した










『終焉ーΩー』<オメガ>の待つ戦場へと・・・














長い話となりましたが最後までお読みいただきありがとうございました
時間軸の狂いだしたX5からZEROシリーズへいたる物語の序章と言った話になりました
そして・・・
これが当サイト最後のX・ZEROシリーズ小説となります

2次創作を始めて行なったジャンルでもあるこのX・ZEROシリーズ
友人に見せる為にノートに書き溜めた物から数えると6年
そしてサイト駆け出しから早くも2年半が経ちました
コマンドミッションアンソロジーなどステキな企画にも多数参加させていただき
いろいろなスランプを乗り越え、たくさんの皆様から励まされて過ごした本当に充実した2年半でしたが、
このたびこちらのジャンルから手を引かせて頂くことになりました

正直一つのジャンルでここまで長くやらせて頂けたのはひとえに皆様のおかげにほかならず
このジャンルを通して、たくさんの人とであうこともできたのでかなり悩んだのですが・・・
詳しい理由は裏日記、H19/3/26の記事を参照してくだされば幸いです


作品を撤去して閉鎖するとなるとマイナージャンル故にサイト数全体が少ないのもありますので
身近な友人と相談した結果、閲覧可能のまま凍結するという形を取らせて頂きました






本当に長い間ありがとうございました





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