遺す者遺される者




その日、アクセルは統括者であるエックスの元を訪れた
慣れない大きな玉座に縛り付けるように座らされた蒼き英雄は昔よりも一回り小さくなっていた
そんな彼を・・・またおいていかなければならない重みがアクセルの胸を押しつぶそうとするが
大丈夫といつもの笑みを浮かべ手に持ったカプセルをぎゅっと握りしめる

「え〜っくす!」

義務付けられた紺色の長いローブを翻し
出会った頃のように駆け寄ってエックスにぴょんと抱きつく
もっともそばにいた緑のローブを着た青年・・・
ハルピュイアは顔をしかめていたが

「アクセル・・・」

優しく彼を抱き締めてくれる両手は彼自身の涙で軽く濡れていた

「エックス・・・僕さ、イレギュラー認定受けちゃったんだ」

単刀直入に・・・しかし何事もない様にアクセルが告げる

「え・・・?」

突然のその言葉にエックスが彼の瞳を覗き込む
彼よりも深いエメラルドの瞳・・・

「ほら、ルミネの一件もあるしね〜、ヤッパリ今まで目をつけられなかったのが不思議だよね
明後日には処分するから出頭しろ〜って言われてるんだ」

早口に・・・捲くし立てるようにアクセル話した
でなければ・・・
エックスが・・・天使がまた苦しむ
間接的に・・・自分の手が仲間を殺したと・・・

「アクセル・・・」

哀しそうに名を呟く天使を無視して、アクセルは手に持っていたカプセルを手渡す

「僕からはこれをあげる!このアーマー使ってよ!
本当はゼロみたいに武器を渡せばいいんだろうけど・・・
それって哀しすぎるでしょ?エックス戦いキライなのに・・・
武器を残してくと・・・また戦えっていってるようなもんだからさ」

彼は無邪気に笑ってみせる
絶対に・・・最後まで泣き顔は・・・


見せない


「だからね、僕はアーマーをあげるよ、そしたら・・・」

名を呼んだまま薄く開いた唇を彼は奪った
最後なのだから・・・
せめて奪いたかったものの1つくらいは冥土に持っていきたかった

「エックスはずっと僕に守られていてくれるでしょ?」

唇を離して・・・そうエックスの耳に囁く
愛してるなんていわないけれど
彼なりの・・・アイノコトバ

「アクセルまで・・・行ってしまうのか?」

顔をゆがめて銀色の涙を流す天使
アクセルはその蒼い髪を撫でてさらに囁く

「大丈夫、僕はゼロみたいに馬鹿じゃないからね・・・
このカプセルの中にメモリーチップもはいってる・・・
僕のプログラムも記憶も全部これにはいってる・・・
きっと平和な時が来るから・・・そしたら僕をよみがえらせてね」

エックスの作った本物の楽園に・・・

彼はそう言って・・・

玉座の間を飛び出した



ネオアルカディアを一望できる高い高い塔の上
アクセルはそこに腰掛けた

「エックス・・・ごめんね」

まさか自分まで彼を置いて行くことになるとは思わなかった

「・・・エックスが悪いんじゃないよ・・・人間がどんどん身勝手になっていったんだから」

玉座に縛り付けられた天使は飛び立つことも休むことも忘れ
ただ血に塗れて埋もれていく

「・・鎖を断ち切ってあげたかったけど・・・みつかっちゃったんだ」

エックスをつれて逃げようとした・・・
その計画がばれてイレギュラー認定を受けた・・・

「あんな事しなきゃずっと一緒にいれたのかな?でもね・・・
エックスの泣き顔を見るのも傷付いていくのを見るのもいやだったんだ」

メモリーチップにはいっていない今日から明後日までの記憶は消えてしまう
エックスを泣かせたことも忘れて自分は甦ってしまう

昔のように笑って・・・

「そういう意味では・・・ゼロって賢明かもね・・・
思い出だけ残してさくっと消えるって・・・」

アクセルはそういって
ずっと文句ばかり言う相手だった紅い剣士を夕陽に重ねて思い出した

一緒に肩を並べて戦っていたのも
エックスを奪い取る為に対立したのも
ふざけてじゃれついて遊んだのも

モウ何十年と昔の思い出

彼は世界の平和を願い楽園を出て
天使をおいて大地の下で今も一人で眠っている

「ゼロ・・・無責任じゃない?多分ゼロが起きてたほうが平和だったよ?」

腐り堕ちていく楽園

天使の白い羽は血で紅く染まる

その赤を見て・・・天使は剣士を思い出している

「・・・ゼロがいたほうが絶対うまくいってたよ」

アクセルは都内を走るハイウエイを見つめた

紅い剣士に出会った場所を思い出して・・・


「絶対さ・・・3人でいたほうがうまくいってたよ・・・
きっとエックスの望む楽園だって・・・・ゼロがいたら作れたのにさ」

エックスが言えない事をはっきりと伝えることが出来たゼロ
彼がいれば人間にさえ逆らって本当の楽園を築いていけただろう

それにきっと・・・エックスが望む楽園の中にはゼロもアクセルもいて

エイリアも
シグナスも
ダイナモも
パレットも
レイヤーも
マリノも
シナモンも
ナナも
マッシモも

それにハンターベースの皆もいて

楽しく笑って過ごせるような

そんな楽園だったはずだ


「だからね・・・ゼロ、楽園の為に眠ろうなんて馬鹿なことしなくてよかったんだよ」

アクセルの頬を涙が伝う

それは遺していく天使への想いと
遺していった剣士への思いと

2人がくれた・・・たくさんの思い出が流させた


きっと最後の涙・・・





処分の日当日

アクセルは久々にハンターベースの制服に袖を通した
躰になじむ懐かしい感触


「アクセル、エックス様拉致計画を企てた罪にてイレギュラー認定、処分を開始する」

賢将;ハルピュイア・・・
エックスの遺伝子を基に作られた青年がそう告げた

針天井が迫ってきても
アクセルは不思議と恐くなかった


「こんなのよりゼロに叩ききられる方が恐かったし・・・
レッドに怒鳴りつけられるほうがもっと怖かったし・・・」


笑いながら天井を見上げる

もうすぐそこまで針は迫ってきていた


「エックスに泣かれる方が・・・もっとコワくて・・・辛くて・・・痛かったよ・・・」


そう呟いて・・・・



アクセルの意識は闇へと沈んでいった













これが拍手小説だった当事
いつもバトンをいただくサイト様でアクセルの泣き顔イラストをいただきました

その絵にトキメキまくったのはいうまでもありません(笑)






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