その猫を拾ったのは、確か廃墟の裏道で
その猫を飼おうと思ったのは、ただの小さな気紛れで
真っ白で丸々と太ったその猫に僕はムーンと名付けていた
「ほ〜ら、御飯だよ」
イレギュラーハント、その成果で買った猫用のミルクとキャットフード
お菓子の空き缶に入れたそれらを、ムーンはあっさり平らげていく
御飯が済むとどこかに行って
僕とムーンが会うのは2日に1度だけ
レッドの目を盗んで僕はその猫を飼っていた
行く当てのないその子に、レッドに拾われる前の僕を重ねたのかもしれないけれど
空に上るのはピカピカ満月
「はぁ・・・はぁ・・・」
僕がムーンに出会ってから・・・
もう1月がたった
アリクイックにはあっさりばれて
時々僕と一緒にムーンに会いに行くようになった
そんなアリクイックが僕に教えてくれた
ムーンはただのデブ猫じゃないって
「うまれたっ!?」
「おお・・・たった今生まれたようじゃよ・・・警戒しておるからあまり近付けんがの」
ニュウニュウという小さな鳴き声が、前もっておいておいたダンボール箱の中から聞こえる
「ムーン、ヤッパリ赤ちゃんがいたんだね・・・」
「アクセル・・・お前さんがちゃんと餌をやっていたおかげで元気な子が生まれたようじゃよ」
「じゃ、今日はもう、帰ってよさそうだね・・・」
そう言って僕らは帰っていった
それから何日たっただろうか・・・
イレギュラーハントが忙しくてムーンに会いにいけなかった
でも最初の3週間は子猫が小さすぎてあわせてくれないだろうから丁度いいかと思ってた
餌だけはメカニロイドに運ばせて
警戒されないようにしようと思ってた
それが・・・あまり良くなかったらしい
僕は立ちつくした
血生臭い・・・
ムーンのいた箱は血だらけだった
そういえば、1週間前このあたりからイレギュラーが出てきた
ハンター達が無事に一掃したって聞いてた
でもまさか・・・猫を襲ったなんて思わなくて・・・
半分ほどに千切れた尻尾が落ちていた
ムーンの・・・フワフワの真っ白な尻尾が
血でバリバリにどす黒く固まってた
僕は泣くしかなかった
悲しいと思ったことなんて数少なかったけど・・・
今はただ悲しくて・・・
その日・・・
ずっと僕はそこで泣いてた
空に月が昇ったころ・・・
「・・・君・・・」
後ろから声をかけられた
振り返ると頭と顔半分・・・そして左手を包帯でぐるぐるに巻いた人が立っていた
怖くてビックリしたけれど・・・
「もしかして・・・君の猫だったの?」
そう言われて、僕は頷いた
「飼ってた訳じゃないけど・・・野良だったから・・・」
「・・・そっか・・・なら悪いことしちゃったかな・・・?」
そのひとがくすっとわらった
半分見えてる笑顔が・・・とても可愛い
「ごめんね、お母さん猫の尻尾は守れなかったけど・・・皆生きてるよ・・・
ただ・・・捨て猫だとおもってたから・・・新しい飼い主を探しちゃったんだ」
「え・・・?」
ムーンが・・・生きてる・・・?
ムーンの子供達も・・・?
「ほ、ほんと!!ムーンたち生きてるの!?」
嬉しくなってその人に詰め寄った
「ムーンていうんだね・・・あの真っ白な猫は・・・
この病院の獣医さんがね・・・手術してくれた上に・・・飼ってくれるって」
その人はポケットから4つ折りにしたメモを一枚取り出した
「これが住所、近くだから多分わかると思うよ」
「ありがとう!!!よかったぁ・・・」
涙が嬉し涙に変わる
「おい・・・」
その人の背後から、すらりと背の高い男の人が出てきた
金色の髪が月光にぼんやりと輝いてる
「この子があの猫の・・・」
「ああ・・・お前がその怪我と引き換えに守ったあの猫か・・・」
その人が少し言っただけなのに、男の人はため息をついて僕を見た
綺麗な蒼い目が闇に浮いているように見える
イレギュラーハントの時によく感じるピリピリとした殺気が少しその双眸に宿っていたけれど
不思議となんだか温かな気分にさせてくれた
「よかったな・・・こいつがいなければ・・・あの猫たちは死んでいた
せいぜい大事にしてやれ・・・」
彼はそう言うとすっと背中を見せて帰っていく
「じゃあ・・・ね・・・」
そのひともすっとその男の人の後を追う
あの人の怪我は・・・ムーンを守るために・・・?
この赤い染みはあの人の血なんだろうか・・・?
びっくりしながらぼくは貰ったメモを開いてみる
すると・・・
メモの中から1枚のカードが滑り落ちた
拾い上げてみるとそれは1枚のIDカード
裏返っていたそれをひっくり返す
次の瞬間、僕はビックリして腰が抜けるかと思った
テレビで見慣れた顔写真
蒼いアーマー
IRREGULAR HUNTER : X
そう書かれたIDカード
慌てて彼らの後を追うけど・・・もうそこには誰もいなくて
「あのひとが・・・」
ムーンを助けたのが伝説の英雄だなんて・・・
英雄が・・・怪我をしてまで助けてくれたなんて・・・
僕は月を見上げる
もう少しでまた満ちるだろう・・・綺麗な月
「よおおおっしっ!!」
僕は書き記されていた住所に向かう
ムーンの顔を見たら
その子どもの顔を見たら
もう、後は強くなろう
あの子達を助けてくれた
とても優しいあの人の
あの蒼い背中を目標に!!
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サブタイトルは「アクセルとエックスの馴れ初め」
だい〜ぶ前にリクエストを頂きましたHIMARU様に捧げます(アックスということで)